もう1年前のﾊﾅｼなのですが、貸切した京急車の車内で鉄道模型を走らせる遊びをしてきました。


ありえん楽しすぎたのでレポ動画を作ってﾆｺﾆｺにうｐしたから見てｺﾒﾝﾄしてね。


このときのレイアウトボードは特製で、新1000形20次車1890番台が取付けているL/C(ロング/クロス)シートの寸法に合わせて製作してます。
ボード設計にあたって現車の形式図とにらめっこしてたときからずっと思ってたのが「1890って車内だいぶ狭いな」って。
この詰め込み性能について、JISで算出方法が規定されているので、こんかい動画をうｐした勢いで求めてみましたよっと。

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まずは現車車内の雰囲気と構造を写真で比べてみましょう。
上がロングシートの銀千、下がL/Cシートの20次車1890番台。



L/Cシートは変形ｷﾞﾐｯｸのための空間を要すうえ、ｼｰﾄそのものが大きいので、枕木方向の床面が狭いのです。

この狭さが詰め込みにどう影響するのか、定量的に比較してみたいなってﾊﾅｼです今回。

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定量化に用いる規格の番号は JIS E 7106 、名称は 鉄道車両-旅客車用構体-設計通則 です。
この規格をざっくり要約すると、実用十分な強度の車両を作るための標準的な評価方法を定めてまして、この中で第5章に構体へ作用する荷重条件を提示しています。
旅客車の荷重、特に通勤型ではﾗｯｼｭ時に旅客がｷﾞｯｼﾘ詰め込まれる状況へ耐える必要がありますので、JIS E 7106ではこれを下記(引用)のとおり定めてます。

＞まくらぎ方向に座席を並べて配置した腰掛間で挟まれた床面及びレール方向に座席を並べて配置した腰掛の前縁に沿う幅100mmの床面を除いた客室床面のうち，有効幅300mm以上及び有効高さ1800mm以上確保できる床面の面積を0.1㎡で除した値を立席の最大乗車人数に用いる。

要は、人が立って入り込めそうな部分の床面積を求めて、1人あたりの占める面積を0.1㎡と見做すと、限界までｷﾞｯｼﾘ詰め込んだときの人数が見積もれますよーってことです。
日本の大抵の電車は、この人数と着席定員あわせて60kg/人とした荷重を想定して、構体とか台車とかの強度計算しているんですね。

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比較する車種は、新1000形の1次車Muc形(未更新)・6次車M2uc形・20次車1890番台Muc2形の3種としました。
本当は先頭ではなくｼﾝﾌﾟﾙな中間車で見ておきたい気持ちだったのですが、20次車は全中間車にトイレが付いてて客室部分が狭くｱﾝﾌｪｱなので。
寸法は公表されている形式図から読み取れまして、これをCADでｽｹｯﾁへ写図して、JISの規定に該当する床面積をざっくり求めました。

該当する床面を抽出したスケッチをお見せします。

もう雰囲気からして銀千の強さが際立ってますね。
この面積を0.1で割った値が立席の最大乗車人数、すなわち詰め込める人数となります。

車種	JIS E7106による 床面積	立席の 最大乗車人数	対銀千比
1次車 Muc	26.5 [㎡]	265 [人]	95％
6次車 M2uc	27.8 [㎡]	278 [人]	(100％)
20次車 Muc2	23.4 [㎡]	234 [人]	84％

いちばん詰め込みが効くのは、クロスシートもｦﾀｼｰﾄも付けていない銀千(6次車)でした。
1次車も大差は無く、差は13人で5％減ほど。
ところが問題の20次車1890番台では、銀千で乗れていたﾊｽﾞな44人もの旅客が溢れてしまう計算です。
4両編成ではざっくり見積もっても150人を超える差になります。


鉄道輸送のｺｽﾊﾟ、特に京急線で求められる通勤輸送の面では、一度に1人でも多く運べた方が有利ですから、詰め込みが効かないｸﾙﾏはとにかくもったいないです。
また旅客の立場からしてみても、同じ乗車人数において車内が窮屈だと当然居心地悪いでしょう。
20次車1890番台のL/Cシートはロングシート状態が用意されているとは言え、ロングシート車と同等スペックとはなり得ないのです。

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そうは言っても、そもそも20次車1890番台のコンセプトは「観光・イベントにもフレキシブルに対応する車両」(車両技術 262号より)ですから、活躍できる場面や運用がロングシート車と異なります。