京急の鉄道模型を作っているとき書くよ。 面白い床下機器を見つけたとき載せるよ。 東杏電機製造(トウキョウデンキセイゾウ)のお知らせをするよ。
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明けましておめでとうございます(3月)
事故以外で京急車の話題が無いなぁと思ってのらりくらりと過ごしているうちにだいぶ日が空きましたが私は元気です。

閑話休題。
新1000形6連の1301編成が何やら改造を受けて3月中旬頃に出場しておるそうでして、取材に行って来ましたよっと。

こちらはTu1形・サハ1303号車で山側床下の浦賀寄り。
新しい箱とタンクと台車枠のブラケットが新設されてますね・・・
箱の名称は「塗油器継電器箱」とのことで、フランジ塗油器が新設されています。

サハ1303号車の山側側面全体を見てみましょう。

塗油器継電器箱・タンク・台車枠ブラケット の3点セットは、浦賀方(写真右側)と品川方(写真左側)の両方にそれぞれ新設されています。

海側側面も見てみますと

台車枠のブラケットは追加されていますが、床下の艤装には大きな変化は無さそうですね。



各要素を細かく見てみましょうか。
まずは台車枠に取り付けられたブラケットから。

オモテから見るとこんな姿をしています。
取付は台車枠に当初から用意されているタップ穴を利用しています。
先端側にはホースが2本、床下から伸びています。

ホースの先端はブラケットの補強板に隠れているので、裏側から覗いてみます。

ブラケットの先端にはブロック状の物体が固定されていて、丸い砲金色の突起が付いているのがわかります。
これがフランジ塗油器としてのノズルで、2本のホースは圧縮空気とグリス(液体潤滑剤)を供給しているものと考えられます。


別の角度から見てみると、車輪踏面のフランジ付け根を目掛けてノズルが取り付けられているのが分かります。
一般的に、曲線通過中の外軌側車輪はフランジの付け根付近がいちばん面圧が高くなる領域だそうで、グリスを噴射するノズルの位置関係として理に適ってるのかなと思います。

ノズルが取り付けられているのは、第2軸と第3軸のそれぞれ海山両方の車輪で、計4ヶ所でした。



次に塗油器継電器箱をば。
1両に2つ取り付けられており、名称は浦賀方が「塗油器継電器箱1」、品川方が「塗油器継電器箱2」とされています。
以下写真は浦賀方のものですが、品川方のは左右対称でだいたい同じっぽいです。

見た目は何の変哲も無いフツーの箱ですねw
左側から配線が取り出されて裏へ回っているので、裏側も見てみます。

配線はとぐろを巻いたのち、黒い角型の物体3個へ接続されています。
黒い角型にはそれぞれ銅管も接続されておりまして、これは電磁弁なのかなと推測します。
つまり、塗油器継電器箱で電磁弁を制御し、圧縮空気をノズルへ適宜供給することでグリスが車輪踏面へ噴射される、という仕組です。

さすれば圧縮空気の供給元も確認しないといけませんね!

床下のど真ん中に吊っている元3空気タンクの山側配管に、分岐する枝と「塗油器」コックとチリコシが追加されていました。
ここからグリスの噴射に使われる圧縮空気が供給されていくものと考えられます。

ついでに紹介しておきますと、M2uc1形・デハ1301号車とM2sc1形・デハ1306号車のCP(電動空気圧縮機)も吊り変わってるんですよね。

クノールブレムゼ製のVV180-T形です。
これ、従来の三菱製MBU1600Y-1形とカタログスペックを比較すると、1割ほど容量が大きいタイプなんです。
フランジ塗油器による圧縮空気の消費量アップとCP吐出量アップとで何か関係性があるんでしょうか・・・



最後にタンク。

SKF社のロゴが貼ってあります。
グリス噴射システムとして売ってるのかタンク単体のものなのか、ちょっと簡単には調べがつかなかったです。
お友達とかに助言いただいたりしてググってみたら出てきたのですが、どうやら「SKF EasyRail」なる潤滑剤噴射システムを買ってるみたいですねー。

よく見ると残量メーターが付いています。

鉛直方向にメジャーが付いていて、その右隣にガラス管がありまして、その中の黒い浮き子が低いと満タン/高いと残ナシだそう。


台車とタンクとの間には衝立が設けられました。
グリス汚れかバラストの跳ね上げか何かからタンクを保護する位置関係になってます。



少しだけ艤装関係の話を。
フランジ塗油器のノズルとゴムホースを設置するスペースの関係で、1位台車(浦賀方)に隣接するCUB(コックユニット箱)とREC(整流器)箱がそれぞれ移設されていました。

まず海側のCUBです。

↑こちらが今回改造後のサハ1303号車ですが

↑塗油器設置前はこのくらい接近した位置にありました。

そして山側のREC。

↑塗油器設置後のサハ1303号車です。(ポールが邪魔ですみません…)


↑改造前はこのくらい。
箱本体がけっこー接近してますが、向かって右側から取り出されている配線が特にゴムホースと干渉しそうですね。



以上、フランジ塗油器搭載に伴う外見上の変化でした。
もちろん乗車して、作動としての仕様も確認して参りましたよー。
車内でもノズル直上にいれば漏気音の様にグリスの噴射音が聞こえるので、気にして乗ってみると割と簡単に作動が分かります。

で、4ヶ所付いているフランジ塗油器は、それぞれ個別に下記5項目のand条件でグリスを噴射するものと考えられます。
  • 走行速度 数km/h 以上
  • 曲線走行中
  • 曲線の外軌側
  • 車体中心より見て進行方向後位
  • 約3秒周期で連続噴射約1.5秒
この作動を行う為には、①速度 ②進行方向 ③曲線区間 ④曲線方向 の4つの情報が必要です。
①と②は車両のシステムとしてセンサや指令線があるので取得は難しくないかと思うのですが、③と④の曲線関係は一体どーやって検知しているのかとんと見当もつきません。
現車に乗ってみると分かるのですが曲線進入に対する噴射開始の反応はかなり繊細で、ゆる~いR2000曲線でも大半で反応しており、遅れは目測上1車身も無かったと感じています。
台車に測距センサでも付いているのかと思ってよく見てみましたが見つかりませんでした。
いやはや不思議です。
(後で何か分かったら追記しようと思います)
上述した「SKF EasyRail」システムなんですが、どうやらメーカ公式の資料(PDF)を読んでいくと「Control unit and curve sensor」なる要素が含まれるそう。
説明によるとこのコントロールユニットはヨー角の角速度センサを内蔵していて、スタンドアロンでバルブを制御できるとのこと。
仕組み上、車上に固定しておけばどこでも機能するハズなので、塗油器継電器箱の中身はこのコントロールユニットと推測されます。
なるほどオモテから見えるところには何も付いていないわけですw

あと私の個人的な心配というか雑感なんですが、レール塗油装置を搭載する既存の1700形と完全に作動仕様が違ってて意外だなーと。
上述したサハ1303のグリス噴射条件って一言で述べると「全てのカーブ」なので、たとえばR2000曲線でのグリス塗油って要るのかなぁ勿体ないなぁ、ってもにょったり。
あと蒲田から空港線方面出てすぐの散水してる曲線、あそこでグリス噴射したのが溜まっていったらやばそう(こなみ)
・・・とまぁ勝手に心配してるんですが、もう営業線に投入されてる機構なので、当然既に解決されているものなのでしょう。



完全に別件のおはなしですが、私のサークル“東杏電機製造”が5月に開催予定のコミックマーケット98にスペースをいただけました。
日付は4日目(5月5日)、場所は西2ホールの お-17b です。
新刊として、2010年代の京急車の技術動向総集編みたいな感じの本を持って行きます。
ちょっと社会情勢不安定な感じですが、頑張って書いてますんで是非皆様にお目に掛けたいなと思いますのでよろしくおねがいしますです。
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