京急の鉄道模型を作っているとき書くよ。 面白い床下機器を見つけたとき載せるよ。 東杏電機製造(トウキョウデンキセイゾウ)のお知らせをするよ。
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京急電鉄の2015年度新造車・1367編成の主回路装置が東芝製になるようです。
東芝製の主回路装置の新車採用はもしかしたら史上初かも知れません。
(私の資料の限り、55年間以上ありませんでした)

東洋電機製造と三菱電機ばかりだった京急線に突如殴り込みを掛けてきた東芝製VVVFインバータ装置。
よく分からなかったのでちょっくら調べてみたら割と凄かったのでまとめてみます。


こちらが1367編成が艤装するものと同じシリーズの、阪急納めSVF102-B0形です。
筐体は制御アンプや継電器部が収納される部分の左右をパワーユニットが挟む、MM'ユニット車向けの一般的なつくりですね。


制御アンプというのは、運転士の力行/制動nノッチの指令を元にインバータを制御する演算部のことです。
継電器部は、主回路に関わる様々な制御用低圧電源を開閉するリレー(継電器)を集約して収めているところです。
パワーユニットは主電動機に流す大電力を制御する核の部分で、半導体のスイッチング素子(IGBTとかGTOとか)とダイオードから成っており目立つヒートシンクを付けています。

主電動機に流す電流の回路を「主回路」なんて呼ぶのですが、上記の中ではパワーユニットが主回路に該当します。
HB(高速度遮断器)やLB(断流器)、FL(フィルタリアクトル)なんかも、主電動機への流路にある素子なので主回路に含まれます。

話をパワーユニットに戻しましょう。
パワーユニットの中では、スイッチング素子が6個1組になって下に示すような動作をしています。


なんの説明もなしに見せられても「???」かもですね、サーセン 
赤いところへ架線電圧(プラス)が、青いところへレール電圧(マイナス,グラウンド)がかかっています。
色が付いているスイッチング素子(IGBT)はターンオンされていて、下流へ電流を流しています。
このGIFアニメの順番にターンオンされるのが三相インバータの基本動作です。

右側は電動機の固定子ソレノイドを模した部分で、赤い高圧か青いグラウンドがスイッチング素子を通じて順に繋がれていきます。
これ、赤と青の領域がくるくる回っているのが分かるでしょうか。
ソレノイドに印加される電圧の位置が回るとソレノイドを流れる電流も向きを変え、電動機の中心を軸にした回転磁界を生み出します。
電動機の出力軸である回転子は、固定子がつくりだす回転磁界につられてトルク(回転力)を発生するわけです。


これまで多くの鉄道車両には、MM(主電動機)としてIM(誘導電動機)が使われてきました。
IMは回転磁界と回転子との間に速度差(スベリと呼びます)を生じてトルクを発生します。
こいつがなかなかユルい電動機なのです。
そのユルさを利用して、1つのインバータ回路から並列接続した複数のIMを運転できました。
いわゆる1C8Mとか1C4M2群とかですね。
VVVFインバータ装置のパワーユニットの中身は、例えばこんなのです。


こんど京急線へデビューする東芝製主回路では、PMSM(永久磁石同期電動機)が使用されます。
PMSMはその名の通り同期機なので、回転磁界の向きが回転子の磁極と同期していなければ滑らかに回転できません。
車輪径の違いや空転滑走によって微妙な速度差が生じる鉄道車両の駆動用では、複数の並列接続が困難です。
1C1Mの1対1関係が絶対なワケですね。
よって2両分8MMを制御するSVF102系VVVFインバータ装置では1C1M8群です。
こんな主回路ツナギになりました。

 あ た ま お か し い 。 

一見すると何の変哲もないパワーユニットの中にはここまでギッシリとスイッチング素子が詰め込まれているのです。
1つのパワーユニットのことは、東芝さん曰く4in1インバータユニットなどと呼ぶそうですよ。
いやはや恐れ入りました、こんなにもコンパクトに作れるもんなんですね。



パワーユニット寸法を決定する要素の一つに、発熱へ対応できるヒートシンクの容量があります。
半導体であるスイッチング素子やダイオードは電流が流れている間どうしても抵抗損を生じて発熱するため、それを冷やしきれるサイズのヒートシンクを付ける必要があるのです。
SVF102系VVVFインバータ装置では、現在主流の同容量帯な各社製VVVFインバータ装置と比較すると小振りなヒートシンクを付けています。
つまり逆に考えればパワーユニットの発熱を減らせているワケで、謎のテクノロジーです。

本体の寸法はどうでしょうか。
まずレール方向長さについて、京急新1000形の4連と6連がこれまで艤装してきた、東洋電機製造製RG694-B-M形と比べてみましょう。

ちょっと長くなっていますね。
パワーユニットでは健闘しているのですが、制御アンプとか継電器とかの制御系機器も4倍に増えているはずですのでその分本体が大柄になってしまっているのでしょうか。

続いて体積について、同じくRG694-B-M形とザックリ計算で比較してみたら下表のようになりました。
本体体積 (除ヒートシンク) ヒートシンク体積
東芝 SVF102系 (1C1M8群) 約 1.9 m3 約 0.13 m3
東洋 RG694-B-M形 (1C4M2群) 約 1.5 m3 約 0.35 m3
本体体積もけっこう大きくなってます。
近年の電車は耐障害性を高めるため補助電源系統の多重化が求められており、床下艤装がどんどん苦しくなっています。
主回路に割くことのできるスペースが減っていく中でVVVFインバータ装置の大型化は、売り込みにおいてなかなか苦しいところがあるでしょう。



しかしそれでも東芝がSVF102系には、圧倒的な強みが存在すると私は確信しています。
主電動機ノイズの大幅な低減です。
SVF102-B0形にて駆動する阪急1000系電動車に乗ってみての率直な感想は「ベアリングの音しかしない」でした。
VVVFインバータ制御独特のサイケデリックなサウンドは完全に消え、車内に響くのは車輪の転動音とかすかなベアリングの転がる音だけでした。
こんな電動車にはかつて乗ったことがありません。
個別分散制御にこだわり続けてきた東芝がPMSMの技術を得て行き着いた、究極の主回路システムなのだと感じました。

これが新1000形に載って110km/hで快走するところを想像するだけでわくわくします。しませんか?
かつてシーメンスGTOで「インバータを聞かせる」世代がありましたが、ついに「無音にする」世代がやってくるのです。
1367編成の落成は今年度中。
ブレイクスルーの京急線到来はもうすぐです!




2015.12.09 追記
本日、京急1367編成が営業運転を開始しました。
東芝よりプレスリリースも発表されています。

東芝:プレスリリース (2015-12-09):京浜急行電鉄新造車向け電気品納入について
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2015_12/pr_j0902.htm
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